冬になってローラー開始してから、インターバルのレスト中に、体重の分散について考えていた。手にかかる荷重が減ると、脚への荷重が増えてケーデンスがあがり、そのためパワーもあがる。バイクで荷重がかかる部位はサドル、ペダル、ハンドル。ここに荷重センサーを設置してペダリングしながら測定すると何か興味深いデータが得られないか?と考えていたら実際にやってる人がいました。

Lennard Zinnによる原文はこちら。

で、ここからが覚書。

 Retul Muveというフィッティングバイクの後輪にパワータップを組み込み、サドルとステムとボトムブラケットに荷重センサーを仕込んだ。

出力の研究:サドル、ステム、クランクへの荷重に対する出力の影響。
パワーを1W/kgから4W/kgにあげると、サドルとステムへの荷重は減り、ボトムブラケットの荷重は増えた。
2W/kgでは、サドル、ステム、ボトムブラケットにそれぞれ体重の40,15,45%の荷重がかかった。
1W/kg 出力があがると、サドルの荷重は3%減少、ステムは1%減少、ボトムブラケットは5%増大。
水平方向の力は、サドルを後方におす力が体重の20%、ハンドルを前方におす力が12%、ボトムブラケットを前方におす力が8%であった。

ケーデンスの研究:2W/kgの出力時に、ケーデンスが、サドル、ステム、ボトムブラケットへの荷重にに与える影響
2W/kgでは、ケーデンスを60rpmから90rpmにあげると、サドルの垂直方向の荷重はややあがり、ボトムブラケットへの垂直方向荷重はやや減少、ステムの垂直方向荷重はほぼ一定。

ハンドポジションの研究:3つの(トップ、フード、ドロップ)ハンドポジションはどう影響するか。
手をトップ、フード、ドロップと移動すると、サドルへの荷重が減り、ハンドルの垂直荷重は増すと予測していた。しかし、結果は驚きで、一番ハンドルへの荷重が軽かったのはフードポジションで、一番荷重が大きかったのはドロップだがトップポジションと大差なかった。

ロードとトライアスロンのポジションとサドルの研究:サドルのタイプとライダーのポジション(ロードとトライアスロン)は2W/kg,90rpmで、荷重にどう影響するか。
通常のサドルとノーズのないトライアスロン用のサドルで比較すると、サドル、ボトムブラケット、ステムの荷重にはほとんど差がなかった。(サドルは差なし、通常のサドルよりノーズのないサドルのほうが、わずかにステムに荷重が大きく、ボトムブラケットに小さかった)
ロードのポジションに通常のサドル、トライアスロンポジションにノーズなしサドル、でくらべると、トライアスロンのほうが、ステムへの荷重が大きく、サドルへの荷重が少なく、ボトムブラケットへの荷重もやや少なかった。

ハンドルバーのスタック(地上高)とリーチ(突き出し量)の研究:+/-2cm、4cmの変化はどう影響するか。
ステムを-4cm>-2cm>0cm>2cm>4cmとスタック(ハンドルバーの高さ)をあげていくとハンドルバーへの荷重がへり、サドルへの荷重が増えると思うかもしれない。が、そうはならなかった。ステムへの荷重はへっていったが、サドルへの荷重は増えずに、ボトムブラケットへの荷重が増えたのである。サドルへの荷重はほぼ一定だった。
ハンドルバーのリーチ(突き出し、ステム長の変化に相当)を-2cm>0cm>+2cm,+4cmとふやすと、サドルの垂直荷重は増え、ステムの垂直荷重は減った。常識とは逆の結果だった。バイクフィッティングにはフォーストランスデューサーを使うべきではないことを示している。<ここよくわからん?

前後ホイールへの荷重分布:さまざまなフィッティングプロトコールをつかったアマチュアと、プロサイクイリング2チームのライダーをくらべる。
アマチュアライダーは3つのカテゴリーにわけた。自己流フィッテイング、スペシャライズドのBGフィット、Retulシステム。プロはBMCとガーミンシャープ。
14人のプロはリアに60%、フロントに40%付近にみな集中。(平均リア59.6%、フロント40.4%)
自己流のアマチュアは、リア 61.5%、フロント38.5%。Retulはよりアグレッシブでリア55.3%、フロント44.7%、BGフィットは逆で、リア67.1%、フロント32.9%。

サドルの圧力中心の研究(進行中):サドル後退量(前後位置)の変化はサドルの圧力中心の位置に影響するか。
興味深い予備結果がでている。ハンドル位置をかえずにサドルを後退させても、サドルの圧力中心は変わらなかった。これは驚きの結果。サドルを後退させると、ハンドルバーまでの距離を保つために、おしりの位置は変わらず、サドルの前(ノーズ)側に座ると考えていたからである。実際には、ライダーは腰をひいて、サドルの同じ位置に座ったのだった。
<以下略>

サドル判別能研究(進行中):ライダーは固定バイクにのってサドルの違いに気付けるのか。
ベテランライダー達が挑んだが、ほとんどのライダーはサドルの違いに気付けない。一つは通常のサドル(フィジークアンタレス)、もうひとつは穴開きサドル(スペシャライズドローミング)なのにもかかわらず。

主題のライダーの快適性研究(進行中):個々人の解剖学的計測(例えば、脚長、骨盤幅、脊柱の柔軟性)がサドルの快適性の指標になるか。
研究者はサドルの不快性と相関する解剖学的要素を特定できると考えている。不快性スケールが使われるだろう、快適性よりも。過去にこのトピックについての研究がないのは不思議。

以上。

まず、2W/kgという出力時だが、L1レベルであり、レース出力での考察は中心となっていない。一般サイクリストが販売対象の多数を占めるので当然なんでしょうが、知りたいのはレース出力時ではどうか、というところ。
ローラー練習でのレスト時に、腕をつっぱって(つっかえ棒みたいに)休んでいるよりも、腕をつっぱらずに体幹で上半身を支えるようにすると自然にケーデンスがあがり出力もあがる。体幹を鍛えておくとレース中により力を温存できる可能性はあると思うがどうだろう。
ハンドル高をあげると、サドルでなくボトムブラケットへの荷重が増えるということは、出力が増すということ?空気抵抗と引き換えにはなるが、ハンドルが高いほうがパワーは稼げる?@zaikouさんにもご指摘いただきましたが、上死点、下死点での荷重が増えているだけで推進力になっていない可能性あり。ペダリングモニターと併用すると面白いデータ取れるか?
また考えつくことがあったら追記します。