2013のFriction Factのチェーン・ルブ・テストへの反論です。
原文はこちら。 

要約
 2013のFriction Fact(以下FF)のラボテストは、現実の世界の環境とは異なる。 現実には何度も変速が行われる。しかし、FFのテストにおいては、チェーンはフロン・チェーンリングとリアのスプロケットの間をまっすぐに保たれたままである。
負荷も250W一定だが、現実には100Wから750W、それ以上の負荷もかかる。もし高負荷のときにチェーンがまっすぐたもたれていなければ、ワックス・ルブはプレートやピン、ローラーの間でけずりおとされ、決して元には戻らない。これがワックス・ベースのルブの問題点である。現実世界ではチェーンのふれ、が、(チェーンの)プレートやピン、ローラー の間からワックスをあっという間に搾り取って、潤滑性を失わせる。一方で、チェーンの負荷や振れがおさまれば、ウェットタイプのルブはチェーンの中に戻ってくる。この理由でFFのテストは信頼できない。

ではどのルブがベストなのか?

チェーンののび、を指標にした。
200マイルごとにPark CC-2を用いてチェーンののび、を測定。
自転車にのったあとは毎回Clorox Disinfecting Wipesでチェーン、フロントチェーンリング、リアカセットをふいた。
各チェーンで、ProLInkを0-1000マイル、フィニッシュラインドライルブを1000-2000マイル、シェル Rotella T6を2000-3000マイルで使用。どのチェーンも、どのオイルを使用しいている区間でも摩耗に差はなかった。合成エンジンオイルと4オンス11ドルの高価な自転車用オイルは変わらない性能だった。 

1.潤滑 ドライ・ルブよりウェットルブが優れる。
 ドライルブのほうが汚れが少なく、メンテナンスが楽ではある。が、チェーンのふれによってひきはがされたルブが、再び躍動部にもどってくるのはウェットルブ、であるから、潤滑性はウェット・ルブが優れる。

2.注油 まめにやるべき。

3.10スピードのチェーンと11スピードのチェーン。
11速のチェーンのほうがより精密に作られている。
Parks CC-2で新品のチェーンを測定すると10速のチェーンは35-50%の摩耗をしめしていた(のびてる、ということ)。一方で11速では-30%からほぼ0%。




  結論

1.10速のドライブトレインにも11速のチェーンを使うべし

2.乗るたびにチェーンは綺麗にするべし

3.まめな注油はチェーンの使用期限を伸ばす

4.ベストのチェーン・ルブはウェット・ルブ

5.おすすめのルブは自転車用の高価なルブよりも化学合成油のシェルRotellaやMobil1。


なぜなら

1.どのウェット・ルブでもチェーン寿命もパフォーマンスも変わらない

2.高品質化学合成エンジンオイルは4オンス1.5-1.77ドルだが、自転車用は11ドル。化学合成油は鉱物油より抵抗が少ないなど、付加価値がある

以上(かなり省略、意訳)


ここからは自分のコメント。

全体に説得力がないペーパーだと思う。
まず、FFのペーパー2014(手元に2013がないので2014を参考に、あとで2013でてきたら修正します、以前購入したはずなので)では、チェーンの性能は多面的な見方があるが、速さ、に主眼を置いたテストをする、ときちんと宣言されている。
 一方こkでは、ドライ・ルブが速くない理由として、被膜が保たれないことがあげられている。一理あるとは思うが(感覚的にはその通りかもしれないが)根拠がない。これを 証明するにはいくつかの方法があると思う、簡単なのは、ワックス(パラフィン)の融点と駆動時のチェーンの温度を明らかにすること。パラフィン140Fだとすると融点は60℃。(駆動時のチェーンの温度は調べられなかった。自分で測ってみれば良いのだが、まだやっていない)もし融点がチェーンの温度より低ければ、ワックスも削られる一方でなく、再度躍動部に流れ込むかもしれない。(実際に躍動部に流れ込むのを確認できるわけではないので証明にはならないが。)
 比較的簡単にできそうなのは、クランク型とリアハブ型のパワーメーターを同時に装着してチェーンを交換しながら出力差をみる、という手もありそうだが、測定に求められる制度が1W以下なので厳しいかな。(通常のパワーメーターの誤差は1−3%程度なので、250Wでも2.5Wの誤差、とすれば1−3W程度の差は誤差でかき消されてしまうかもしれない。)

チェーンの温度は低いほうが抵抗が少ない、というレポートもあった(FFのデータ、添加物なしの一般的なオイルを使っているのでワックスでのテストではない)
流動性が良いことよりも、コーティングが厚いほうが抵抗が少ないのではないか?と推察されている。

チェーンの伸び、が早いこと、を被膜の強さに結びつけようとしているように思われるが、短距離での被膜の潤滑性とは別問題である。

10速のドライブトレインでも 11速のチェーンを使うべきだ、というのは興味深い。が、ここでのべられたのは、新品での伸び、が11速用チェーンの方が短い、という ことだけであって、チェーンの幅についてはまったくふれられておらず、10速で使って問題ない、という根拠にはならない。が、別のリポートで、10速のチェーン は11速のチェーンより幅が広いということはない、というのがあったので幅の問題はクリアされそう。
初期の伸び、とチェーンのもちが、相関する、とは必ずしもいえないと思うが、DURA ACE の 10速チェーンが廃盤になったので、11速が問題なく使えて、耐久性も悪くないなら11速用を使おうかと思う。

ここで推奨しているウエット・ルブ、とは、ワックス系でなくオイル、という意味だと思うので、少し意味合いがことなるが、以前キャノンデールのメカの人だったとおもうんだけど、どんな天候でもフィニッシュラインのWETがよいよ、といっている記事を読んだのを思い出した。2014テストで、同じフィニッシュラインのセラミックよりもウエットのほうが抵抗少なかったのは興味深い。

もう一遍リポートを読んでみる。